遺伝素因の話
母親が乳がんだったけど私は? おじいちゃんが糖尿なんだけど私も?と思うことはありませんか。 。。家系ということはどういうことなのでしょうか?
遺伝子はからだの設計図です。ですから、生まれつき両親からの遺伝子を半分ずつ受け継いで、あなたは設計されています。でももし、設計ミスがあって、ひとつの蛋白質が全然働かなかったら、どうなるでしょうか。このように働かなくなってしまった(あるいは働きすぎる場合もありますが、)結果起こるのが遺伝病です。これは子供のときから異常をきたすたとえば筋ジストロフィーなどで遺伝子治療が考えられています。ここでは成人になって発病する病気だけを扱っています。
では糖尿病や癌は確かに遺伝することがあるのに、なぜ子供のときから発病しないで、大人になってから発病するのでしょうか。これらの病気は一つの蛋白質の機能が働かないのではなく、機能としてはちょっとおかしいだけなのです。これは皆さんの顔が違うように、遺伝子の個人差とも言うべきものです。だからそれだけでは癌になったり、糖尿病になったりしません。たとえば癌の場合、ある遺伝子の傷(遺伝素因といいます)があって、さらにもうひとつ傷が増えたり、同じ傷が深くなったりすると癌になります。だから、子供のときに癌にならなくても化学物質や紫外線で遺伝子を傷つけそして治して、を繰り返した大人になってから癌になるのです。同じように化学物質を食べていても人によっては大事な遺伝子には当たらなかったりすれば発症しないこともあります。糖尿病も同じようにある遺伝子にみんなと違う素因があります。けれども食べ過ぎたり太ったりしなければ糖尿病として発症しない。と考えられています。つまり、この検査で、素因が見つかっても生活習慣に気をつければ発症しないようにできるということです。癌であれば、今注目のフリーラジカル、化学物質、の摂取を避けるように生活習慣を変えれば発症を防ぐことも可能と考えられます。
つぎに大事なことは、素因はひとつではないということです。癌という病気はからだの細胞がどんどん増殖して止まらなくなった状態ですが、細胞を増殖させるのに関わっている蛋白質は何千もあるので、原因はひとつにならないのです。また糖尿病もブドウ糖やインスリン分泌に関わる何千という蛋白質のバランスが悪くなった結果と考えられます。しかし、この何千のすべてが病気と関わるのかというとそうではありません。なりやすい蛋白質があります。遺伝子が組み換わるときに間違いが起こりやすい場所とか、民族的に持っている素因とかです。
ではこのような遺伝子はどうやって調べてきたのかというと、家系を調査するのではなく、病気があるかないかを目安に何百という人たちの遺伝子を調べてかかわりの強い遺伝子を見つけてきました。これには莫大な費用がかかるということが容易に推測できるでしょう。ほとんどが国をあげて行っている何億円もかけた大型プロジェクトです。2つの大事なポイントがあります。調べた人数が何百という数が問題で、小さな数では結論できないこと。遺伝子と関りの関係は99%というような高い数字ではなく90%程度であることです。このことは素因遺伝子がひとつではないことを示しています。いまインターネットでしらべると実に多くのこの研究に関る論文がありますが、選択する対象が偏っていたり、数が少なかったりと信頼できるデータを見つけることのほうが難しくなっています。
当研究所ではこの点を特に注意して、確実な結果を提供することを目的としています。